シルバーブラッド 眠らぬ夜に
持ち上げようとして、右手の傷が開くのが分かった。

 ぶちっと、音すらした気がした。

 箱には五百ミリリットル入りの瓶が二十個入っている。

中身が水だとすると、十キログラムの重量があることになる。

しかも硫酸は比重が1・8くらいだった気がする。

ということは、水の1・8倍くらい重いことになる。

だいたい倍だとしても、二十キロ。

その上に瓶の重さがある訳だ。

 普通のときならなんてことはない重さだが、今日はこたえた。

 新しくしてきた脱脂綿に、血がにじんでいくのが分かる。

 何とかそれを自分専用の営業車に積み込んで、錦先生の注文品を探した。
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