シルバーブラッド 眠らぬ夜に
だじゃれがおかしくて笑うことなんか滅多にない。

けれど、それをこんな年齢の人に、しかも研究室にいるような大先生に、臆することなく言ってのけられると、内容がつまらなければつまらないほど、おかしくてたまらなくなる。

 一瞬凍りついた空気とか、間とかが、浩之には壷なのだ。

「切山くんはウケてくれるから好きだ。うちの学生たちは洒落の何たるかがわからなくていかん」

 いや、普通、わからないって。

 浩之は笑いすぎで片腹が痛くなった。

とりあえず錦先生は、だじゃれのネタに使う以外に手の怪我のことを勘ぐるつもりはないらしい。

浩之は涙を流しながら、ダンボールを床に置き、錦先生ご注文の試薬を取り出した。

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