シルバーブラッド 眠らぬ夜に
「おお助かった。急がしてすまないなあ。しかも怪我してるのに持ってこさせて」


 怪我くらいで、持ってこない理由にはならないと思うけど。


浩之は苦笑した。

「そうだ。親切な切山君に、お礼にこれをあげよう」



 いや、だから親切でやってるんじゃなくて、仕事なんだって。

 
錦先生は、薬品棚の手前にずらりと並んだ褐色の小瓶を三本取ってくれた。

「空き瓶だ。綺麗に洗って乾かしてあるから。遠慮なく」

 浩之は、一瞬凍りついて、それを眺めた。それからハッと我に返ると

「は、ありがとうございます」

 言ってそれをおし頂いた。

 この先生は、時々、変なものをくれるのだ。

 確かに、こんな瓶を捨ててしまうのはもったいないけれど。


もらっても、なあ。


< 65 / 241 >

この作品をシェア

pagetop