シルバーブラッド 眠らぬ夜に
床の電話に手を伸ばそうとすると、再びコール音が鳴り出した。

 驚いてぴくっとなりながら、動きを止めた。

また、母上か。

何となく身構えて、留守電が対応するのを待った。

一度、留守電モードになってメッセージが吹き込まれたので、今度は二回コールで機械音が流れ出した。

ピーッという発信音の後、浩之の母の声ではない、沈んだ声が流れ出した。

『浩之君、いないの?あの、英樹のことなんだけど。本当に何にも知らないのかと思って。』

 柴崎さんだ。十年前の、英樹の彼女。

 英樹がいなくなってから、こうしてちょくちょく浩之と関わりを持とうとしてくる。

彼女はまだ、英樹のことをあきらめていないのだ。

 英樹の、何がそんなにいいんだろう。

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