シルバーブラッド 眠らぬ夜に
 中には白衣姿の女の子がいた。

いつもは三人いるはずなのだが、今日は一人のようだ。

「あ、ご苦労様です」

 小柄で愛想のいい皐月さんが対応してくれる。

「どうしたんですか?その手」


 訊かれたか。


浩之は苦笑した。

「女に刺されました」

 皐月さんは、けらけら笑った。

本気にはしてないようだが、それ以上訊こうとしなかった。

「硫酸二十本、間違いないですね」

「はい」

 答えながら、忙しそうに、褐色瓶にピペットを突っ込んでいる。

 箱をいつもの位置に置いて、皐月さんに近づいてみた。

 今度は赤い培地の入ったシャーレを覗き込んでいる。

「何、見てるんですか?」

「大腸菌群数。まあ、出ないけど」


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