シルバーブラッド 眠らぬ夜に
「切山は兄弟いないからそんなこといえるのよ。

兄弟なんてね、いない方がいいような馬の合わないのもいるんだから」

 『知ってる』

 浩之は心の中で大きく頷いた。

 『それでも、兄弟の存在を隠そうともしないのは、まだましなことなんだよ、薫先輩』

浩之は、羨望の眼差しを、薫先輩に向けた。

浩之は、ここでは一人っ子だということになっている。

触れて欲しくも、ないから。

ここのヒトに、あいつの存在を、知られることも、嫌だから。

「いいわよね。切山は。あたしも一人がよかったな」

 『オレだって』

 そしたらどんなに良かっただろう。

 大事なおもちゃをわざと壊されたり、親の見ていないところで、殺されかけたり。

そんな経験が、薫先輩にあるんだろうか。

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