シルバーブラッド 眠らぬ夜に
「げぇっ。知らないから言えるのよ。

あいつったら、しょっちゅう人の勝負服は持ち出すし、なけなしのお金をはたいて買った高っかい化粧品は勝手に使うし、借金は返さないし」

 浩之は、不満を並べる薫先輩の顔をじっと見ていた。

 何となく、悪口を言いながらも、口元が緩んでいる。

 馬はあわないし、我がままで腹は立つけれど、可愛い妹なんだって、その表情は言っている。

 結局、自慢したいんだな。

 浩之はほほえましく思った。

 服を着ていれば見えないところを選んで、打撲や切り傷をつけてくるような兄弟は、普通いないんだろう。

 
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