シルバーブラッド 眠らぬ夜に
 言って、薫先輩は浩之の手からコーヒーを取り上げた。

「これはあたしがもらうわ。

切山には、紅茶を入れてあげる」

 薫先輩は立ち上がった。

「あ、いいです。

自分で入れます。

それに、コーヒーの香りをかいだら鼻血が出そうな気がするだけで、本当には出ません」

「そうだっけ?」

 言って、薫先輩は笑った。

「まあ、とにかく私がいれてあげるから、あんたは注文ノート整理しとけば?」

「そうします」

 自慢じゃないが、浩之の字は他人には判読不明なのだ。


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