追憶 ―箱庭の境界―
あぁ…
そうだ、我は…
『…我ハ未ダ…「鬼ゴッコ」ノ途中ナノダカラ…』
情景は何時まで続くのか。
誰の情景なのか…。
我には解らない。
しかし、其れが未だ途中である事にはかわりない。
花の匂いを纏う風が言っていた。
情景の続きを、
我は見なければならない。
「…どうしても鬼の手を使わないって言うのね!?鬼さんは!」
少女は小刻みに肩を震わせて、涙を溜めながら怒っている様だった。
『…何故、怒ル…?』
「…貴方が、あまりにも強情だからよ!!じゃあ、別の手よ!あの赤い実を食べて!!」
あの赤い実は、
我ら鬼の無くした「心」。
『…我ハ食ベナイ。』
「どうしてよ!この間は私が食べようとしていると誤解して止めようとしたでしょ!?大事なんでしょ!?」
赤い実を守る事は、
我ら鬼の定めだった。
奪われるのは嫌だった。
其処に在り、
只、其処で揺れていれば良い。
「――時間が無いんだってば!鬼さんに感情が戻りつつあるのは何故!?あの赤い実が熟れて、中身が染み出してきているからよ!時期に落ちてしまうわ!」
『赤イ実ハ、我ニ必要ナイ。』
赤い実は、
もう…欲しくない。