追憶 ―箱庭の境界―


サザエル国は島国であり、
海を挟んだ近隣の3つの島から成り立つ。


緑豊かなエッジ島。
農業や酪農を営む者が多く住み、サザエルの食文化を支える。


最も外海に近いゴザ島。
他の島に比べ面積の小さな其の島は、乾いた風により多く吹かれる為に近年砂漠化が進む。

寂れた小さな町が2つ在るが、潤いを求めて他の島に移り住む者が増えている。


そして、
最も栄えた、国の核ともいえる人口の多い島。

其処は、
サザエル国、本島サイル。


整った道には街路樹が並び、レンガ造りの歴史ある建物がひしめき合う。
その綺麗な町並みは、魔術の栄えた国として他国からの訪問者に溜め息をつかせる。


かつて暮らしていた町。
しかし青年が暮らしていた町外れは、中心部とは程遠い貧困の土地だった。


町の中心部には、国王の居城をはじめとする主要な建物が多く並ぶ。

其の一角に位置する魔術学園。
其の魔術に守られた、桃色の花が咲く大きな樹の下で、あの少女に出逢った。


友達として過ごす事、数年。
初めて少女の名を知った日の事は忘れもしない。

其の少女の名は、リフィル。
此の国の王女だった。


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