追憶 ―箱庭の境界―
「……どうして…こんな所に…。まさか…。…リフィル様…なのですか?」
青年は乾いた唇を動かし、必死に声を出した。
複雑な思いだった。
あんなにも会いたかった彼女を前にして、目的を遂げられていない自分の不甲斐なさが勝ってしまい、此の場から逃げ出したくなっていた。
隠れてしまいたい、と思った。
「……マル…ク…?」
「………」
「そうよね?マルクなのね!?」
肯定を躊躇った。
あの幼き日、無力だった自分を責めるだろうか。
10年以上の月日が経つ中、一度たりとも助けに向かわなかった自分を責めるだろうか。
彼女はどんな思いで、
今、自分を見ているのだろう。
責められても仕方がない。
青年はそう瞳を伏せ、王女の反応を待っていた。
「――…懐かしいわ!今日は何て良い日なのかしら!」
王女は満面の笑みで、心から嬉しそうにそう言った。
其れは青年にとって、思いもしない反応だった。
「ねぇ、今どうしてるの?あれから、どうしていたの?急にこの町から姿を消したって聞いて…。私のせいよね?ごめんなさい、マルク。」
「……ぇ?え?」
青年の握りしめていた拳から、徐々に力が抜けていった。