追憶 ―箱庭の境界―
王女は責めるどころか、反対に青年が町を出たのは自分のせいではないかと謝り、青年を驚かせた。
そして、青年の其の様子を見て、クスクスと笑っている。
(…まるで初めて出逢った日の笑顔の様ですね…)
ひらひらと降る、
桃色の花びらに囲まれて。
王女は明るい表情で、青年との再会を心から喜んでいた。
状況を把握しきれなかった。
青年の心は、あの日のまま。
自由を求めて泣いていた王女の姿を胸に抱いたまま。
鳥籠に閉じ込められた、
囚われの王女を、
青年が救うはずだった。
「…リフィル様、…また…城から抜け出したのですか…?」
「…え?えぇ、そうね?息抜きをしに、よくこの樹を眺めに来るの。ふふ…昔と相変わらずね?私…」
青年は、ふふっと笑った。
つられて王女も照れ臭そうに笑っていた。
(…そう…。やはり貴女は未だ…籠の中の鳥なんですね…)
――キンコーン…
其処へ例の鐘の音が鳴り響くと、王女は表情を輝かせて青年に問う。
「…ねぇ、覚えている?この鐘の音!私、この音を聞く度に貴方の事を思い出していたわ。毎日よ?だから、貴方を忘れた日は無かったのよ?」