追憶 ―箱庭の境界―
「…ねぇ、今まで何処で何をしていたの?」
「他の国で…、魔術を学ぶ為に旅に出ていた…といったところでしょうか?つい先程この国に戻ったんですよ…」
「…その黒猫は?」
「旅先で出逢った、長年の僕の信頼出来る相棒です。」
「…行くところはあるの?これから、どうするの?しばらくはサザエルに居るの?すぐにお別れなんて言わないで?」
「…住む場所は…、とりあえずは宿を取ります。これからの事は未だ…」
ふふ、と得意の穏やかな笑顔で青年は笑った。
昔と変わらない様子で瞳を輝かせて話をする王女の姿が、嬉しくて堪らなかった。
「…良い事を思い付いたわ!」
そう笑う王女の瞳は、
一層輝きを増していた。
「城の書庫の隣に、使っていない部屋があるの!城に仕えるウィッチになって、私の傍に居てくださらない?」
「――…ぇ…?」
王女には驚かされてばかりだ。
途方に暮れていたはずの青年は、王女と再会してからの短い時間の内に、明るい未来へ向かう道筋を得てばかりいた。
(…運命なのでしょうか。神もが、僕らの手助けをしてくれている…)
「…でも、突然に僕の様な者が城に仕えるなんて…。貴女の立場が悪くなる…」