追憶 ―箱庭の境界―


「…そうねぇ…。じゃあ、私たちが友達だって事は秘密よ?それで、ちょっと城の皆の記憶を弄ってしまおうかしら…」

「そんな…。王女がそんな事をして良いのですか…?」

にゃ…
『…いけない王女様ねぇ?』


「…あら!だから秘密なのよ!2人と一匹の秘密!…だって、あの日にお別れしてしまった分の時間を取り戻したいんですもの…。駄目?」

「……リフィル様…」

2人と一匹の、
桃色の花の樹の下での、秘密。


――キンコーン…


にゃぁ…
『あら、また鐘の音…』


こうして、
王女は自身の身内を含めた一部の城の人間の記憶をすり替え、あたかも青年が正規の手段で城に仕える事になったかの様に装った。

王女は只、昔の様に楽しい時を過ごしたいという安易な考えからだった。
折角の再会を果たせた青年と別れるのは辛かった。

お互いに、
友人以上の感情を抱いていた。
懐かしさの隣に、淡い恋心が存在していた。



王女は後に、此の自分の我儘から招いてしまった身勝手な過ちを、心から後悔する事となる。


何故、再会してしまったのか。

時に、
神は残酷な運命を紡ぐ。


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