追憶 ―箱庭の境界―
「…どうしてかしら。アンと仲良くなれないのよ、私…」
ある日の午後。
リフィル様が自室でお茶をすすりながら瞳を落としたので、肩を落とす彼女に僕は優しい言葉を掛けた。
彼女は父親を亡くしたばかり。
あれ程反発していた相手とはいえ、肉親を亡くした彼女の心は陰を落とす日が多かった。
「…アンは気難しいですから。何もそう感じているのはリフィル様だけではありませんよ。申し訳ない事に、城の皆さんも彼女には手をやいています。」
「そうかしら…」
「そうですよ。特にリフィル様はこれまで動物と接する機会が無かったのでしょう?アンも…お互いに接し方が分からないのでしょう…」
「…そうね。貴方がそう言うのなら、そうなんでしょうね?」
リフィル様は「ふふ…」と笑い、手にしていたマグカップに再び口をつけた。
信頼されていた。
女王リフィルは、
僕の言葉を信じきっていた。
「そろそろ…夕方の謁見の時間です。今日は弟君のリオン様もご一緒するそうですよ?」
「えぇ、心強いわ。私は女王という立場に、未だ慣れなくて駄目ね…」
「時期に慣れますよ…。僕はずっとお側に居りますから…」