追憶 ―箱庭の境界―
広い中庭で、
アンの通り道は限られていた。
僕らウィッチは直ぐにアンの気配を感じ、発見するまでに時間は掛からなかった。
「虫の息」だった。
「……ア…ン…?アン!?」
「――…っ!?」
僕は血相を変えてアンに駆け寄り、リフィル様は両手で口を押さえ其の場で立ち尽くした。
「――…どうして!こんな!」
赤い…、
血にまみれた、黒い体。
…にゃぁ…
『…ごめんなさい…ちょっと失敗…しちゃったわ…』
止めどなく溢れる血。
城壁の隙間から、
彼女が倒れ込む此の場まで、
茶色の土が黒ずんでいる。
「…失敗!?失敗って何です!こんな怪我を何処で!?今すぐ手当てを…!」
「今、救護を呼ぶわ!」
リフィル様がそう叫ぶが、アンが其の足を止めた。
『…止めてよ。カッコ…悪いじゃない。それに……』
モウ…
…助カラナイ…
其れは解っていた。
僕らウィッチは、
アンの怪我と様子を見た瞬間に、もう…
其れは解っていた。
其れでも、
何とかして繋ぎ止めたかった。
僕の、アン。
僕の、アンネ…。
どうして?
どうして?
…ねぇ、どうして?