追憶 ―箱庭の境界―
にゃ…
『…マルクと…2人で話が…』
アンは地面に倒れ込んだまま、微かに首と琥珀色の瞳だけを動かし、僕にそう訴えた。
僕は地面に膝を付いたまま、
震え出す声と体を押さえ、
今出来る限りの冷静な態度でリフィル様に言った。
後ろに立つリフィル様を振り返る事も出来なかった。
「…リフィル様は…お時間です…。どうぞ謁見の間へ…」
「…でも!こんな時に!」
「…女王が…こん…な事で、心を乱してはいけませんよ…。」
僕は自分自身に、
そう言い聞かせているかの様だった。
静かに淡々と、
口から言葉が出ていた。
「…女王が時間に遅れては、人が呼びに来るでしょう…。僕は今日は…ご一緒出来ません。騒ぎにならない内に…、静かにお別れをさせて下さい…」
リフィル様は心優しい方。
僕がリフィル様が此処に居る故に感情的になれないのだと、悟ったに違いない。
「…アン…、貴女と友達になりたかったわ…」
『…あら…あたしもよ…』
悲しみに囚われた気配が1つ、
此の場から消えた。
リフィル様は瞬間移動した先で、1人涙を流してくれているに違いなかった。