追憶 ―箱庭の境界―
「…僕の大切な黒猫を、ご存知ありませんか…」
「あぁ…まぁた文句かよ。僕の黒猫!?ありゃあ俺の物だ…。俺の物に何をしようと、俺の勝手だろうよ!」
僕のアン。
僕の母親。
「……黒猫の主人は、能力の高いウィッチだと…聞いていましたが…?」
「は!馬鹿にしに来たのか!?お前、城のお偉いさんだろ。」
男は昔、
この国で罪を犯し、ウィッチである血を封印された罪人。
魔術を奪われ、この町外れで荒れた生活をする内に、黒猫に見離された。
そして、
黒猫は僕と出逢った。
「元は俺の猫だ!自分の持ち物に何をしようと俺の勝手だろ!力在るものが、弱い者の上に立つ!何が悪い?お前たち…国が俺にした事と同じだろうがっ!?」
「…国は…命を奪う事を…しましたか?アンは…、黒猫は…何もしていないはずです…」
「うるせぇなぁ!!目障りだったんだよ!クソ猫が!軽蔑するような目で俺を見やがって!ただの猫が!自分の立場を解らせてやったんだよ!」
「……自分の、立場を…?」
可哀想なアン。
僕のアン。
この男は、愚かだ。
アン、貴女の選択は正しい。