追憶 ―箱庭の境界―
15・『 歪む想い 』
15・『 歪む想い 』
サザエル国の女王であるリフィル様が、僕の目の前で言った。
「…アンの代わりにはなれないけれど、私が貴方とずっと一緒に居るわ…。」
「……リフィル様…」
「貴方は未熟な女王である私を助けてくれる。私は貴方に何をすれば良いかしら。只、傍に居るくらいしか出来ないけれど…」
其れは、愛の言葉なのか。
其れは、哀れみの言葉なのか。
其の判断さえ出来ない。
しかし、
僕に残されたのは、
『彼女への想い』
其れだけだった。
「…ずっと、私の傍に居て?」
熱の隠るリフィル様の瞳。
僕の目の前に差し出された、
か細い手の先。
引き寄せて、
抱きしめてしまいたかった。
只の、
「男と女」になってしまいたかった。
しかし、
其の手を取る時は、
彼女を掴まえる其の時は、
彼女を「只の女性」にする、
「自由」を与える、
其の時と決めていた。
僕は耐えて、
彼女の足元に膝を付く。
「…貴女の生きる道が、僕の道。生涯、貴女の元で…」
女王と従者。
其の距離を保った。
其の時のリフィル様の悲しげな瞳は忘れようがない。