追憶 ―箱庭の境界―
「……即刻、他国への侵略を取り止めなさい。此れは女王としての命令です!」
彼女の言葉は本気だった。
僕を見つめる瞳に、
僕へ向けた怒りの色を感じた。
「……はは!あはははは…!」
でも僕は。
引き下がらなかった。
「……何が可笑しいの!マルク!貴方がこんな人だとは思わなかったわ!」
僕は未だ、
「鬼ごっこ」の途中。
此の手は、何の為にある?
「貴女を掴まえる為」…。
貴女を、
「自由」にする為に…
可哀想なリフィル様。
鳥籠の中の貴女は、
運命を受け入れてしまった。
僕が遅くなってしまったから。
僕が早く捕まえてあげなかったから。
「……もう、いいわ。無駄のようね!下がりなさい!!私が直接、兵に命令を下します!貴方には後で然るべき処分を!」
彼女はそう荒々しくベッドから立ち上がると、目の前の僕を避けるように、部屋の扉へ向かった。
可哀想なリフィル様。
大丈夫、
未だ…間に合います。
「――…!?」
僕は、
彼女の腕を掴んだ。
あの時、
捕まえられなかった彼女の腕を、力一杯に掴んだ。
驚く貴女に、
僕は優しく笑い掛ける。