追憶 ―箱庭の境界―
「……マル…ク…」
「はい?」
「…貴方…何を……」
彼女は急に力を無くし、その場で僕に腕を掴まれたまま、床に崩れ落ちた。
あぁ、リフィル様。
どうか苦痛を忘れて。
「…此れを貴女に返す日こそ、貴女に『本当の自由』を与えられる日…。国なんて、どうでも良いのですよ。貴女の為になら、僕は鬼にも悪魔にもなる…」
だから、
もう少し…
待っていて下さい。
貴女を抱き締める、
其の日まで…
貴女の心臓は、
せめて、僕の体の中に。
僕の、心臓の隣りに…
女王リフィル様の「心臓」。
僕の胸の中で、2つの鼓動が重なり合っていた。
其の日を境に、
僕は自分の事を「私」と口にする様になった。
僕は貴女と、2人で1つ。
「…リフィル様は体のお加減が悪い。リフィル様は自室での療養が必要です。皆の前に姿を現すのは、夕刻時の謁見のみ。それ以外は、私がリフィル様の代理として女王の御言葉を皆にお伝えしましょう…。」
どうか、気を楽に。
皆が貴女の代理として、私を信頼しています。
どうか、ゆっくりと。
「私の鳥籠の中」で、
其の日が来る日まで…