追憶 ―箱庭の境界―
16・『 愛しき操り人形 』
16・『 愛しき操り人形 』
…全ては、
貴女を愛するが故。
「…長きに渡り代々城に仕えていた従者が数名…、現在の王政に反発した結果、見せしめとして命を落としました。全て、リフィル女王を装ったマルクの命令です…」
「……何て事を…」
リフィル様の自室での、彼女と侍女であるリザによる会話。
彼女が悲しんでいる事が、手に取るように分かる。
私の体の中で、彼女の心臓の脈を打つ音が速くなった。
「マルクは貴女の自由を奪い、この国の政治を乗っ取っている…。その事に勘付いた者を全て始末するつもりでしょう…」
「…そんな…!リオンは?弟はどうしている?」
リフィル様が自室から出られない様に私が閉じ込めた。
皆の前に姿を現すのは、夕刻の謁見の時間のみであり、其の間は私が彼女の全てを操る。
彼女が情報を得る術は、侍女のリザ以外無い。
「リオン様は、今のところ勘付いてはおりませんので無事ですが…。姉上であるリフィル様を嘆き、憎んでおられます…」
「そう、無事なのね。憎んで良いの。私を憎み、国を救ってくれさえすれば、それで…」
そう溜め息を漏らすリフィル様の言葉を、リザが止めた。