追憶 ―箱庭の境界―
「…えぇ、有難う…。でも…」
「いいえ、元を正せば…マルクがああなってしまったのは、私にも原因が在るのですから…。」
ピクリ…と、
定期的に書物を捲っていた私の手が止まる。
リザは、幼き頃からリフィル様に仕えていた。
リフィル様が自由を求めている事を知っていた人物であり…
「私が、あの日…。あの橋の中心で、リフィル様を無理矢理に彼から奪ったのですから…」
幼き私が、
リザを前に、無力さを知った。
しかし、今は違う。
「…自惚れも程々にして下さいね?リザ…?貴女ごときの為に私がこうなったとでも…?」
自室から瞬間移動した私は、
リザの首元を締め上げていた。
「――…マルク!止めて!!」
リフィル様が、健気にも私を止めに間に入った。
人並み程度のリザの白い魔力。
同じ白い力とはいえ、到底磨きあげた私の魔力には及ばない。
其れは、城の兵も他の国民であろうとも同じ。
私の脅威となる色付きの魔力を持つ者は、先代の王と王妃が亡くなった今、王族であるリフィル様と弟のリオン様のみ。
すでに、
リフィル様は、私の手中。
邪魔者は、弟リオン様。
しかし、其れも今日まで。