追憶 ―箱庭の境界―


我は「箱庭」という名の、
鳥籠の中に捕らわれていた。

しかし、
境界は無くなってしまった。


「――行こう、鬼さん!」

…もう、
少女は何の躊躇いも無く、汚れた我の手を引いた。

汚れきった我の手に、
温かな少女の体温が伝わる。


「…泣いてばかりいないで歩いて!もう!境界を越えるのよ!弱虫の上に、泣き虫だなんて!本当に手が掛かるわね!」


境界を、越える…
もう…境界が、無い…


我に、
境界は必要な物だった。

箱庭の境界に触れると、
定めによって、我の体はじりじりと焼け焦げた。

何度も何度も、
境界へと近付いては其の行為を繰り返した。

自分への、戒め。



現在、過去。
何時の日も、
我の運命に付きまとう。

 「鬼ごっこ」
 「繋げぬ手」
 「鳥籠」
 「心」

そして…、


何時の日か、
「あの国」にも、

「境界」が、出来ていた。



「情景」の中の彼は、

幼い頃に羨んでいた、

富も地位も、
権力も…、

全てを手に入れたはずだった。


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