追憶 ―箱庭の境界―
18・『 閉じた世界 』
18・『 閉じた世界 』
家の一軒一軒に火が放たれ、
空は暗く灰色。
炎の叫びが聞こえ、焼き焦げた匂いが鼻につく。
人々の悲鳴で朝は目覚め、
兵士たちの笑い声を子守唄に夜は休む。
それが私の日常と化していた。
剣と剣が重なり合う金属音が耳から離れる日は無かった。
炎を見ない日は無かった。
「死」を見ない日は無かった。
――殺戮。
私は、
これを望んでいたのだろうか。
変わり果てた敵地ラルファを見渡すと、度々にそんな疑問が私の頭を過った。
しかし立ち止まる事を、
自分自身が許しはしなかった。
『力ある者が上に立つ。そんな世の中ですからね。サザエルの名を世界に!』
『女王に勝利を!』
表向きには敵地の侵略。
しかし私の目的は別にあった。
そこは、砂漠の真ん中。
空が橙色に染まり、
体が冷え始めた頃だった。
「あの女です。捕らえなさい。」
私は馬に股がり、兵士の小隊を引き連れて、紅色の魔力を追っていた。
彼女は身分を偽り、僻地の小さな街に身を潜めていた。
街を焼き、燻し出し、追手を掛けて砂漠までやって来た。
やっと…
やっと見つけた。