追憶 ―箱庭の境界―
「あの女はウィッチです。ウィッチ狩りから逃れる為に、力を封印しているに過ぎません。多少の傷では死にはしません。やりなさい!」
兵の1人が彼女の背中を切りつけ、彼女は砂に崩れ落ちた。
逃げなさい、と彼女の言葉。
彼女の腕の中から姿を現したのは、幼き子供。
「子供に用はありません。」
母子を取り囲む兵士たちは、気味の悪い笑みを浮かべた。
もう、命の感覚が狂っていた。
まともな感覚を持つ者は居なかった。
私がそう仕向けたのだから。
「――…やれっ!」
馬に股がった私が叫んだ。
子供は首根っこを捕まれ、
宙に浮き…
そして、
鋭く光る剣で…。
「――やめてぇぇぇ―……!!」
力なく砂に倒れる幼い愛しい娘の姿を、彼女は何を思って見つめたのだろうか。
その砂は、
赤く、赤く…染まる。
私もまた、狂っていた。
私は声を上げて笑っていた。
自分で造り上げた悪役に成りきっていた。
「……ふふふ…。致命傷だ、放っておけば事切れる。二つ目の心臓が動いたところで、この砂漠では飢え死ぬ。その前に獣に喰われるだろう。…お前は連れていく!行くぞ…!」
手に入れた。
やっと手に入れたのだ。