追憶 ―箱庭の境界―


彼女は、
何度も、何度も…

血を流す娘を、
涙で霞む目で振り返りながら我々に連行された。


私は、
この時、知らなかった。

彼女、カルラ様が、
魔力を失っている事を。



1人の兵士が震えていた。
「もう沢山だ」と、
「もうこれ以上、子供にまで手を掛けたくない」と。

あぁ…
私に楯突くのですか。

集団の1人がモラルに気付けば、その意識の輪は拡がりを見せて、疑問と不安が生まれる。
まるで池に投げ込まれた小石が描く、波紋の様に。

気付かなくて良いものを。
気付かなければ、
苦しまなくて済むのだから。


「…えぇ、戦も終盤…。もうこれ以上、この地に攻め込む事も無いでしょう。しかし、今の貴方の意見は、リフィル様の意思に、反する物ですねぇ…?」

私の言葉を聞いて、
兵士たちの目の色が変わった。


「リフィル様の意に反する者は、サザエル国民ではありませんねぇ?」

ビクリと、
兵士たちの身は強張る。

女王が「国」だとするのなら、
リフィル様は、私と一心同体。

私が、「国」の意思。


「サザエル国民ではないという事は、排除しなくてはなりません、ねぇ…?」

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