追憶 ―箱庭の境界―
「いくら私でも、そんな仔猫まで手をかけたりしませんよ…?貴女にせっかく出来たお友達ですからね…?」
昔から、今も…
幼かった私以外に、「友達」は居なかったのでしょう?
昔、アンネという黒猫を失う間際、貴女は言っていました。
「友達になりたかった」と。
今度はちゃんと、
友達になれましたか…?
ニャ…
『こんにちは、なにょ。あなた、アタシを苛めにゃい?』
仔猫はリフィル様の膝の上で、可愛らしく首を傾げた。
偵察という目的が私に判らない様に振る舞う、小さな心拍音が心地好かった。
「苛めませんよ?男の子たちに追いかけられて大変でしたね?」
『ご存じにゃにょ?』
「えぇ…それで城に逃げ込んだ。まぁ、ゆっくりして行きなさい?」
私も気付かない振りをして、優しい言葉を掛けていた。
二ャァ…
『…お言葉に甘えりゅわ。』
何故、こんなにも優しい言葉が掛けれるのか。
自分自身が忘れていた、懐かしいアンネを想う気持ちに溢れ、苦笑してしまった。
リフィル様の手前、
すぐに表情を取り繕い、彼女に視線を向け直す。
「さぁ…、リフィル様はお時間です。謁見の間にお願いしますね?」