追憶 ―箱庭の境界―
私がそう手を差し伸べると、リフィル様は普段通りに唇を噛んで抵抗の言葉を発した。
「……嫌よ…」
「困った方ですね?じゃあ、遠慮なく…」
私は掌を彼女に向けた。
普段通り、
私の白い魔力が彼女を包むと、仔猫を守っていたリフィル様の手から力が抜ける。
『…リフィル様…?』
「…………」
彼女の瞳は、どこを見ているわけもなく、ただ虚ろに開いていただけ。
ニャァ…!
『…おじしゃん、何したにょ!?』
返事の返らないリフィル様に驚いた仔猫は、そう私に訴えたが、私は只…笑みを浮かべた。
「さぁ、行きますよ?猫ちゃんは、ここにいなさいね…?」
リフィル様は仔猫が膝にいる事も構わずに、私に操られて立ち上がる。
仔猫は膝の急激な角度の差に床に飛び降りた。
そう…
見たままを主人に伝えなさい。
仔猫は、私とリフィル様が部屋を出た後も、ずっと鳴き声を上げていた。
リフィル様を心配する高い声。
アンネが鳴いている様で、
アンネに批判されている様で、
苦しくなって、
仔猫を、眠らせた。