追憶 ―箱庭の境界―


「今までの分、今度は逆に良い事をする番なんだよ?そのチャンスを逃したら、もう無いんだよ…?お父さん。」

引き返す手が、
其の力を弱めていた。

我は…
取り戻せるだろうか。

進んでも、
許されるだろうか…


『…次ノ世界デ、我ハ…瑠璃ニ、会エル…?』


「――うん!だから、行こう?ほら、アンネも待ってるよ!」


引かれる手。
進む、体。

境界の向こうで、
黒猫が大きな声で鳴いていた。


にゃあぁ!!
『――ちょっと瑠璃ちゃん!早く連れてらっしゃいよ、その弱虫の泣き虫!!全くっ!やっぱり、あたしが居ないと駄目なんだから!!』


境界を、
――…越える……


足元から頭の先へ、
風が吹き抜ける様だった。

風に吹かれ、

罪に染まった黒い羽根が、
我の背から抜け落ち、

羽根と「体」は、広い河の底へ…


我の「心」は、
青い青い広い空へ…



声が、
遠くで聞こえた。


「…私ね、洗礼を受けちゃったけど、元の世界に戻して貰える様にお願いしたから!やっぱりお父さんには、私が居ないと駄目だもんね!」

「――だから、待ってて!絶対、会えるから!!」


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