追憶 ―箱庭の境界―
○エピローグ○
○エピローグ○
瞳を開けると、
目の前に、少女が居た。
「――ぱぱぁ~!おきてーー!」
私の布団の上に乗り、
小さな顔を覗き込ませる。
「……瑠璃ちゃん…。パパ、夜勤明けで…今寝たばかりなんですよ…。お願い、ちょっとだけ寝かせて下さい…」
愛娘のふて腐れた顔。
ふふ…と少しだけ笑うと、再び瞳を閉じた。
「…まま~!ぱぱ、おきない!」
バタバタと、
瑠璃が台所に居る妻の元へ向かう足音が響いた。
此処は、「箱庭」。
ペット可の、
3人と1匹には少し狭い、
「1LDK」マンション。
「…嫌だ、瑠璃。パパ起こしに行っちゃったの?今日は駄目だって言ったじゃない…。」
「…やぁ~!あそぶ。」
「駄目~。パパお仕事から帰ったばかりなのよ?」
「…おまわりさん?」
薄い壁越しに聞こえる、
愛しい家族の会話。
「そうね、お巡りさん。パパね、昔悪い事したから、今度は良い事をするんだって。皆を守る大変なお仕事なんだよ?瑠璃も良い子にしようね?」
「――うん!」
「じゃあ、パパはもう少し寝かしてあげようね~?」
そんな会話を耳にしながら、
私は知らずの内に眠りに落ちていた。