追憶 ―箱庭の境界―
3・濁りを知らぬ青空の下
3・濁りを知らぬ青空の下
昼がやって来ていた。
我らが鬼の住む村では、昼が訪れると普段通りに鬼たちが散り散りに草原へと出掛けた。
村と言っても、人々が考える様な整った場所ではない。
我ら鬼は食う事は勿論、寝る事も快適に過ごす住居すら必要がない。
遥か昔に人々が住んでいたとされる崩れた廃墟に身を潜め、各々に情景を見ながら夜を越す。
我が少年の情景から覚めると昼はとっくに訪れており、村の鬼たちは出払った後であった。
我もまた、崩れた壁に寄り掛かった赤褐色の大きな身を起こすと、辺りを囲む風吹く草原へと足を進めた。
理由など無い。
其れが永久に繰り返される定めであるが故。