追憶 ―箱庭の境界―
其の少年にとって、
桃色の花びらの下で出逢った少女は、初めての「友」と呼べる存在であった。
しかし、
より知り合う事を躊躇った、互いに遠慮が目立った関係ではあった。
それでも、
『あぁ、今日も会えるかな…』
少年は退屈な仕事を終えると、毎日の様に例の場所へと向かった。
其処は、
人とふれ合う事に慣れない、
距離の縮め方を知らない、
臆病な…
不器用な彼らの…
唯一、子供らしく居られる場所だった。
子供に戻れる時間だった。
唯一、
自分らしく振る舞える場所。
我には、解らない。
我に、
『自分』など無いのだから。