追憶 ―箱庭の境界―
しかし、いくら大人びていても中身は子供。
少年はついに、ひがみとも取れる言葉を無邪気な少女へと向けてしまった。
「…僕も『色付き』に産まれたかったですね…。そうしたら、こんなに苦労せずに暮らせたのかもしれない…」
「…そうかしら?」
此の国で『色付き』のウィッチであれば、身分も関係なく、高い学費を払わずとも自動的に魔術学校に収容される。
将来を国に縛られる形とはいえ、今の少年にとっては夢の様な話だった。
「…じゃあ、私と逆ね。私は魔力なんて要らなかった。自由が欲しいわ?」
「…え?でも先日、魔術学校に入りたいって…」
少年は首を傾げて少女に問う。
魔術学校に入りたいが、父に許して貰えないのだと嘆いていたのだ。
「それは!この樹に近付きたかったのと!学校へ行ったら、友達が出来るじゃない?でも、いいの。もう両方叶ったから。」
少女はそう言うと、少年を指差して嬉しそうに笑った。
少年は其の笑顔に照れつつも、生まれた違和感に頭を悩ませていた。