追憶 ―箱庭の境界―
(…色付きは、自動的に学園に入学させられるはずなのに…、それを拒否出来るなんて…。)
少女は貴族なのだろうとは思ってはいたが、貴族であろうと相当に位が高くなければ国に拒否が出来るはずもない。
少女の真新しい小綺麗な服と薄汚れた自分を見比べる。
(…この子…僕なんかと居て、大丈夫なのかな…)
そんな疑問が表情を曇らせていたのか、少年の顔色を伺う少女はわざとらしく話題を変えた。
「…知ってる?色付きって言っても、私なんか全然なのよ?魔力が高いのは『赤色』なんですって!」
「…赤?見た事ないですね…」
「ね?その中でも、『紅色の力』が物凄いらしいわよ?残念ながら、この国には一人も居ないんだって父様がぼやいて…」
其処までを話すと、輝いていた少女の表情がブスッと膨れっ面に変わる。
「ど…どうかしたんですか?」
「…思い出したのよ。私、父様と喧嘩中だったわ。だって、酷いのよ!?」
それからの少女は凄い剣幕で、父親に対して怒っている内容を少年に話し始めた。