追憶 ―箱庭の境界―
少女は誰にも見付からない様に、こっそりと家を抜け出しては此の場所へやって来ていた。
友達を作りたい、外で皆の様に遊びたいのに許しては貰えず、学園にも通わせて貰えずに家で勉強しているのだと言う。
「酷いわ!私は、鳥籠の鳥じゃないのよ!?」
と父親に対しての怒りを少年にぶつけた。
親の居ない少年には、其の話が非現実に思えて、何と答えて良いものか解らずにいた。
「なんかね、隣のシオン国に『紅色の王女』が産まれたんですって!」
「…へぇ?」
「それからよ!父様が前にも増して厳しくなったのは!いくら私が頑張ったって、敵うはずないじゃない!ねぇ?」
「…ふふ……」
目の前の少女が口を尖らせてはプリプリと怒る様は可愛らしく、「自分に妹が居たらこんな感じなのだろうか?」と少年は温かな気持ちになっていた。
「分かった、私。……家出、してやろうかしら。」
澄み渡る、
雲ひとつない青い空の下。
芽吹く緑色に囲まれて。
「――えぇ!?」
其処には、
口を尖らす可愛い少女と、
目をまん丸く見開き驚く少年がいた。