追憶 ―箱庭の境界―
6・『 二人を繋ぐ橋 』
6・『二人を繋ぐ橋』
少女が、
何処の令嬢だろうと構わなかった。
「…最初に言っておくわ?魔術の使用は無しよ!正々堂々、足だけで勝負なんだから!」
「…その言葉、後で後悔しても知りませんよ?」
ふふ、と意地悪く笑いながら少年は目を細める。
何年経っただろうか。
初めて出逢った時より互いに少し成長し、その間いつもの場所で魔術の勉強をしては、頃合いを見て「鬼ごっこ」が始まるのだった。
未だ、思春期の手前。
男女の身体的な差は其処まで現れてはいないが、鬼ごっこに至っては毎回の様に少女が悔しがる日々が続いていた。
「後悔?しないわよ!」
「…負けず嫌いなお嬢さんですね…」
少年は早朝から昼まで、汗水垂らして宿屋の仕事をし、少女との自由時間を終えれば夜は仕事に戻る。
其れに対し、
少女は貴族の箱入り娘。
外で走り回る事では、少年が明らかに優っていた。
「あら!昨日は私が『鬼』で、まんまと貴方を捕まえたじゃない!?」
少女は得意気に鼻を高く上げる様が可愛らしく、少年の全身の力が抜ける。
(…貴女が悔しがるから、わざと捕まったんですよ…。)
今日は少年が「鬼」。
少女が逃げる番。