追憶 ―箱庭の境界―
(…駄目だ!)
兵の前を白いローブが1人。
其れを追い掛けるように、もう1人。
少年が通りすぎる頃に、兵は何事かとやっと顔を歪ませた。
『少女を追い掛け回す少年。』
明らかに悪者に映るのは少年の方であり、自分が捕まるのではないかと冷や汗をかく。
「――待って!だから、そっちは!…あぁ、もう…!」
保安所の先には、川がある。
寂れた、やっと人がすれ違える幅の橋が架かっていた。
其れが、
身分の違う少年と少女の、
越えてはならない、
――『境界』。
(…あの橋で捕まえる!)
少年はグン…と速度を上げた。
「…さぁ!捕まえましたよ?」
古びた茶色の、
レンガ造りの細い橋の上。
アーチ状の登り坂。
少年の伸ばした手が、
もう少しで少女の腕を捕まえる、
其の時、
空から、
『声』が、降ってきた。
『――リフィル様ッ!!』
少年と少女はビクリと顔を跳ね上げて、橋の丁度真ん中で足を止めた。
(……リフィル…様?)
少女を捕まえようとしていた手が、ゆっくりと重力で下りる。
少女は頬を膨らませ、反抗的な瞳で空を見上げていた。