追憶 ―箱庭の境界―
「――なりません!この先は無法な土地!これ以上無茶をなさるようでしたら、王に報告せざるを得なくなりますよ!」
侍女は自分の子を叱るように、声を張り上げる。
「………。」
「…私も人の親。城の中で窮屈な思いをしておいでのリフィル様を不憫に思うあまり、これまで目を瞑ってまいりました。」
「…じゃあ!」
「しかし、これ以上はいけません!王に報告したら、どうなりますか!これまで以上に自由はなくなります。少年との時間も、王の魔術で簡単に記憶ごと消されてしまうでしょう!」
「……嫌よッ!嫌!!」
少女の瞳からは、大粒の涙が次から次へと零れる。
少年が側にいる事も忘れた様に、不満を侍女へと向けた。
少年はどうする事も出来ず、
ただ立ち尽くしていた。
「…どうして?――どうして私なの!?皆の様に外へ出たい!遊びたい!黄色い魔術なんて要らない!!なんで王家に生まれたの!?」
「…そんな事を言っては、王も妃も悲しみますよ?リフィル様?そんな駄々をこねては、産まれたばかりの弟ぎみにも笑われてしまいますよ…」