追憶 ―箱庭の境界―
「…リフィル様に初めて出来たお友達ですからね…、害も無さそうでしたし黙って見ていましたが…。」
ドクンドクンと、
少年の鼓動が速くなった。
侍女の口元からどんな言葉が出るのか、想像はついていた。
「…親もなく、町外れの宿屋で下働きをしているそうですね?」
「………えぇ。」
「――やめてよ、リザ!彼の事は、関係ないじゃない!」
逸らされる事のない侍女の目線は、花に付く毒虫を見る様な冷ややかなもの。
「…これ以上、王女に近付かないで。頭の良い貴方なら、もう解ったでしょうね…?」
「――リザ!?」
少年は何も答えなかった。
首を縦に振らない少年に対し、侍女は説得を続ける。
「…貴方たちは、自分の世界には無い『自由』をお互いに羨ましがる…。お互いの存在が悪影響になるわ…。解るわね?」
「…大人から見たら、そうかもしれませんね…」
互いに無い物を持っていた。
無い物ねだりをしている子供だと言われれば、否定は出来ないと少年は思った。
少女は、少年を羨む。
少年は、少女を羨む。
「…リフィル様、城へ帰りますよ。もう彼に会う事はないでしょう。…お別れを。」
「――嫌よッ!」