追憶 ―箱庭の境界―
少女は侍女の手を振り払い、少年の陰へ隠れた。
「…リフィル様!聞き入れて下さいませ。少年の記憶を消す事くらい、私にも容易いのですよ!?」
「――!?」
侍女の青い瞳が力を増し、体を白い魔力が纏った。
風もなく、侍女の髪が波うつ。
「…リザは白じゃない!私は『黄色』よ!?阻止するわ!」
少女は少年と侍女の間に入り、両手を構える。
静かに、
少年の目の前で魔力のぶつけ合いが始まっていた。
「ふふ、その『黄色』に魔術を教えているのは私です。勉学を嫌がり、ろくに魔術も上達していないでしょう?」
――…パァンッ…
其れは幼い黄色の魔術が、格下である白い魔術に打ち消される音。
はぁはぁ…と少女の乱れる息。
ゴクリと少年の息を飲む音。
溜め息を漏らす侍女。
「…リフィル様。宝の持ち腐れにならぬ様、悔しかったら城へお戻り下さい。」
「――嫌っ!お願い!マルクも魔術を使って!2人なら!」
少女は必死だった。
(…2人分の魔力なら勝てる…?いや、無理でしょう…)
目を伏せる少年に、侍女が更なる追い討ちを掛ける。
「…その少年に何が出来ます?」
其れを言われた少年は、
歯を食い縛るしかなかった。