追憶 ―箱庭の境界―
「…魔術とは無縁の町外れに暮らし、白い魔力に打ち負ける様なリフィル様に、少しばかり習った程度で!何が出来ます?」
(…その…通り…だ…!)
少年は何も持っていない。
富も名誉も、
血筋も、力も、権力も。
其れが無い故に、
『自由』ではない。
「…帰りますよ。」
「――やぁあ!マル…」
少年へ伸ばされた少女の手。
其れを掴もうと伸ばした少年の手のひらは、
空を掴んだ。
(――…!?)
侍女は少女ごと瞬間移動をし、
橋の上には少年だけが取り残された。
「…僕には何も出来ないのか…」
グッと強く拳を握り、
歯を食い縛り、
流れそうな涙を飲み込んだ。
少女は、
『鬼ごっこ』が好きだった。
自由を求めて、
逃げる事に憧れていた。
「…僕、『鬼』のままですね…」
少女の体に触れていない事に気が付き、橋の上で1人自分の手のひらを眺める。
手のひらには、
食い込んだ爪の跡。
「…彼女が自由を求め続けるのなら、せめて、僕は『鬼』のまま…。いつまでも、彼女を追い続ける『鬼』のまま…」
少年は、
自分の「無力」が許せなかった。