追憶 ―箱庭の境界―
8・箱庭の境界
8・箱庭の境界
朝が訪れても、
少女の姿は何処にもなかった。
昨夜遅くに、少女は老婆に連れられて七色に輝く街へ入った。
もう会う事はない。
少女の言葉に縛られず、普段通りに背にある翼で飛び立つ事が出来る。
風が、我に言う。
定めに従い、
『行き先を無くした者』を迎えにいくのは我だと。
『力の尽きる者』を其の手で捕まえるのだと…
此の手は、
鬼の手は、
其の為だけに在るのだと…。