追憶 ―箱庭の境界―
我は定めに従う。
『…迎エニ来タ…。行キ先ヲ無クシタ者ヲ、「力」ノ尽キル者ヲ…』
其の声は地響きの様に揺れては女たちを脅かす。
「ほら~女の子たちが怖がってるじゃ~ん?奈央、ハルカ。大丈夫だよ?」
青年は互いに身を寄せ合う女たちを振り返って『ははは』と笑った。
青年は「笑って」いた。
青年は解っているはずだった。
あの老婆の様に、
「我を」解っているはずだった。
「…昨日奈央に言ったろ?俺、鬼さんたちとも友達だって。それに、鬼族は『ここ』から先へは進めない。」
青年はそう言って、
自分の足元を指した。
河と陸地の、境目。
「…ここが、境界線。」
バサッ…バサッ…と翼を羽ばたかせる度に、境界に触れそうになる翼の先が、チリチリと焼き付く様に熱を持つ。
越えてはならない、
――『境界』
我は、其の境界を越えない形で青年と至近距離を保っていた。
青年は、
我を『友達』だと言った。
『友達』が何を指すのか我には解らない。
しかし、夜に見た情景の中で、あの少女も言っていた。
『お友達になりましょうよ』
少女と同じ。
黒い髪に青色の瞳。
少女とは違う。
体から漏れ出すのは紫色の光。