追憶 ―箱庭の境界―
船は、海辺の国シオンへ。
何故、沢山の選択肢の中で、シオン行きの船を選んだのか。
其処で出逢った、
少年の運命を変える黒猫。
道は、決まっていた。
其の黒猫は、少年が選んだ道を知っていた。
にゃぁ…
『…サザエルは魔術の栄える国。あの国で魔力の大きさは絶対だもの…。うふふ…、王女は次期国王。黄色い魔力…』
「…あの、僕は…」
『あら、言わないで?アタシ解るわ?…王女様はその恵まれた環境を捨てて、自由になりたいんでしょう?うふふ…楽しい…贅沢な話ねぇ。』
猫は上機嫌に、時には口元をゆるませながら話を続けた。
にゃぁ…
『…黄色い魔力の王女。彼女を解放したいのなら、弱虫な貴方がその上をいく力を手に入れなくちゃねぇ…。国を、変えなきゃ…ねぇ?あぁ、興奮して毛が逆立っちゃうわ…?』
「………」
只、漠然としていた少年の思いが、黒猫の言葉として少しずつ組み立てられていく。
少年はゴクリと唾を飲む。
(…この猫…)
普通なら「有り得ない」と鼻で笑られてしまう様な内容を、容易く当たり前の様に話した。