追憶 ―箱庭の境界―
船は汽笛を鳴らした。
ゆっくりと速度を緩め、其の拍子に少年の脇に在った縛り付けの木箱がガタリと揺れた。
しかし、そんな些細な事を彼らは気にも留めなかった。
「…僕に、出来るでしょうか…」
少女の自由の為なら、何でもすると意思を固めていた。
自分を見下した、あの国の人々の上に立ってやる。
彼らを見返してやる。
其のつもりだった。
しかし…
(…国を、変える…?)
其の猫の具体的な計画を耳にして、少年は急に不安になっていた。
『…うふ、出来るわ?長く時間は掛かるけれど…。貴方を、アタシ好みの「器用な大人」に育ててあげる…』
行き先は、シオン。
船はもう港へと着く。
にゃぁ…
『ねぇ…ご主人様?「紅色の魔力」ってご存じ…?』
妖艶な琥珀色の瞳が、
キラキラと輝きを増していた。