追憶 ―箱庭の境界―
「…本当に…。若者の『魔術離れ』が進んでいるこの国で、君の熱意には恐れ入るよ…」
「いえ、そんな…」
若者の魔術離れ。
血に宿る魔力は遺伝である為、ウィッチ自体の人数が大きく減る事はない。
しかし魔術を深く追求しようとする者が減り、軽視される魔術の「質」が、現在シオンでは問題とされているのだった。
(…勿体無い話だ…。貰えるものなら、もて余した彼らの魔力を僕が欲しい…)
何度そう思った事か。
普段の生活に、利便性と少しの潤いを与える為だけに使われる魔力。
(…宿る血が泣きますよ。平和すぎるのも考え物ですね…)
此の国の同年代にとって、其れ以上を必要とする者は居なかった。
「明日も頼むよ。君の熱意を見ているだけで、こちらの士気も上がる様だ。」
「目標とする先生にそう言って頂けるなんて、僕には勿体無いお言葉です…」
青年はそう頭を下げたまま、
一瞬にして其の場を後にした。
いつか目にした「瞬間移動」。
其れが容易く出来るまでに成長を遂げていた。