追憶 ―箱庭の境界―
瞬間移動した先は、城の裏口。
防犯上の理由から、瞬間移動で直接城に出入りが出来ない様になっている為、裏口の監守の目を通る必要がある。
丁度間が悪く、青年が現れた先は監守の目の前。
急に現れた青年に、監守は目を見開き驚いていた。
「――…!?」
「…お疲れ様です。」
「おぉ、君か。御苦労様!…毎度驚かされるよ。若いんだから階段で来たらどうかね…。」
監守はそう笑い掛けながら、廊下の先に在る地下へ続く階段を顎で指した。
長く、暗い螺旋状の階段。
其れを青年は嫌った。
そんな事に体力を使うのなら、より多くの文献を読み漁り知識を深めた方が良い。
「…すみません、驚かせて。瞬間移動も勉強の1つ。魔術の訓練ですよ?」
ふふ…と青年は首をすくめた。
「優等生だな?同年代は皆、遊びたい盛りだろうに。」
「ふふ…そんな事ないですよ。僕にはこっちの方が性に合ってるんです…」
青年は頭を下げ、軽く挨拶を済ますと裏口から外へ出た。
此れまで暗い地下に居た為に、外の強い日射しを浴びると一瞬目が眩む。
日射しを片手で避けながら、城の前に在る町の中心である広場へと足を進めた。