追憶 ―箱庭の境界―
(…カルラ王女の、紅色の魔力を手に入れてやる!リフィル様が僕を待っている!)
青年の目的は変わらない。
そう簡単に手に入るものではないと解っていた。
上手く王女に取り入り、ラルファ国に嫁ぐ際は自分もついて行けば良いと、長期戦も覚悟していた。
しかし、誤算があった。
サザエル現国王、
つまりリフィル王女の父上が、病に倒れた。
次期国王は、リフィル。
彼女を国から解放し、自由にすると心に決めた。
しかし、其の残された期限が予想外に少なくなってしまったのである。
にゃあ…
『…今日は上手くいったの?』
「――駄目でした。紅色の魔力は、僕の予想以上に大きい…」
青年は「紅色の魔力をどう手に入れるか」其の手段に手を子招いていた。
「大きすぎて吸収出来ず、2回とも瓶が破裂しました…」
青年は机の上に並べた薬草を煎じた液体が入る小瓶を、じっと見つめていた。
黒猫を変身させる薬。
其れを作れたのは、王女の魔力を吸収する為に重ねていた研究の延長上。
「魔力を吸収する」薬。
国王の信頼を得て、王女の魔術の教師役になる事に成功した。
青年は授業の一環として適当な理由を付け、其の薬に王女の魔力を吸収させようとしていた。