追憶 ―箱庭の境界―
「マルク、お前の本命はアンネだろう!?彼女はお前を信じて待っているんだろう!?カルラ王女にまで手を出そうとしているなんて…!」
嘘だろう?と彼は言った。
アンネが可哀想だ!と暑苦しく、彼は言った。
事が事だけに其の場に居合わせた監守も、おろおろと息を飲んで見守る。
「…怒鳴らないで下さい。ここをどこだとお思いですか?神聖な城内で、他愛もない色恋事で待ち伏せなど…呆れますね?良い大人が…」
(…邪魔…、邪魔ですよ!)
(…暑苦しい!苛々する…!)
「…例え噂が真実だろうと、僕とアンネの事です。貴方には関係ないでしょう!?」
(――なんという無駄な時間!なぜ、僕らにこうも関わる!?図々しい!)
青年の彼に対する嫌悪と苛々は、頂点に達していた。
「――あるさ!俺はアンネを愛しているんだから!」
「――……はぁ!?」
青年の穏やかな表情は、
一瞬にして崩れ去っていた。
「ふふ…!あははははは!!」
「――何が可笑しい!?」
「あはははは!あぁ…堪らなく、可笑しいですよ!…愛!?愛してる!?」
青年は彼を見下す表情をしたまま、大声を上げて笑った。